夏休みが終わり学校再開のこの時期が、1年のうちで最も多く子どもたちの自死してしまう時期だそうです。「9月1日問題」と言われています。
今日で9月の1/3が終わりました。子どもたちも学校生活に慣れ、生徒会改選や合唱コンクールに向けて、日々を精一杯頑張っています。
そこで今日は、夏休み前に「9月1日問題」を意識して書いた通信を紹介します。
逃げていい
逃げて怒られるのは人間くらい
ほかの生き物たちは
本能で逃げないと、生きていけないのに
どうして人は
「逃げてはいけない」
なんて答えにたどりついたのだろう
この文は、宮城県の13歳の人が新聞に投書したものです。
この文について知り合いの大学教授(理科教育について教えている人)から教えてもらったことを紹介します。
「逃げる」というのは生物学的には当たり前のことです
動物園などのサル山では、ボス猿は肥え太り、下位のサルは痩せますが、自然状態ではそんなことは起こりません。
なぜだかわかりますか?
理由は、下位のサルが、群れから逃げられるからです。
「下位のサルが痩せる」という現象は、動物園という逃げられない状況の中だけで起こる「変」な現象です。
動物の世界にイジメはありません。
なぜなら、それによって得することは無く、損する可能性があるからです。
損する例の一つに「窮鼠猫を噛む」ということわざがあります。知ってますか?
※窮鼠猫を噛む…追い詰められた鼠が猫にかみつくように、弱いものも追い詰められると強いものに反撃することがある
下位のサルは、群れの中でイヤになれば、その群れを出ればいいだけです。
ボス猿は、出て行くサルを追いかけて連れ戻すことは、苦労が多いわりに得することが少ないのでやりません。
結局、下位のサルはもっと別の集団の中で、それなりに過ごしていきます。
下位のサルがどんどん出て行ってしまったら、その群れ自体の力が弱くなります。結果としてボス猿にとっても損になります。
下位のサルにとっても、群れから離れれば損することは確かです。
だから自然状況の中では、サルたちは、ちょっとイヤだからとすぐに出て行くことはしません。
ボス猿と下位のサルたちは、ほどよいバランスの中で群れが成り立っています。
結果として、下位のサルにもそれなりに居心地のいい群れになります。
このようなバランスが生じるには「逃げられる」ことが大事です。
逃げられない状態では、ボス猿のみが肥え太ることになるから、学校も「逃げられる」ようにする必要があるのではないですか?
学校の先生や保護者の立場として本音を言わせてもらえば、何事にも立ち向かう力を持ってほしいとは思います。
けれど、子どもの頃、いじめられていた経験を持つ私にとって、あの時「耐えろ」と言われていたらと思うとぞっとします。
だからでしょうか、知り合いの大学教授の話は私の中にすうっと入っていきました。
「『逃げる』というのは生物学的には当たり前のことです」を教えてくれた上越教育大の西川純さんは『学び合い』の提唱者です。「多様な人と折り合いをつけ、自らの課題を解決すること」ができる子どもを育てようとするのが『学び合い』です。
私は「仲間を誰1人見捨てるなよ」という言い方になおして、子どもたちには話しています。
見捨てないのは道徳的な美しさのためだけでなく、思考力・判断力・表現力を養えるので仲間を見捨てない人にとっても得にもなります。
この夏、思考力・判断力・表現力の研修がやたらありました。やっと時代が『学び合い』に追いついてきたのかな?