もへちゃん先生の学級通信

一日お疲れ様です。もへちゃんクラスの1人になって、ちょっとホッとできる学級通信を読んでみませんか?

ドラマティックな生徒会活動

  前々回のブログ「「手を洗え」と指示するのではなく、自発的に洗いたくなる話 - もへちゃん先生の学級通信」で、

「こらぁ、手を洗わんか~」と先生が怒鳴るのではなく、保健委員会等で保健委員長がゼンメルバイスを語りながら「手を洗いましょう」と訴える。そんな学校って素敵と思いませんか?

と書きました。

 私はこんな学校を作ることは可能だと思っています。

 それは、生徒会担当をすることが多く、それ故に素敵な生徒会役員の子たちに出会ってきたからです。

 そこで今回は、多くの学校で今でも問題になっているであろう差別発言に対して、真っ向からとりくんだ子どもたちについて書いた通信を紹介します。

ある生徒会の話

 以前勤務した学校での話です。

 生徒会役員選挙が終わり、新生徒会の役員たちは生徒総会で提案する新しい生徒会スローガンについて熱く話し合いました。
 そしてできた新しいスローガンは「信友~本音でつながる絆~」。
 これには、

  • お互いが本当の気持ちをぶつけあうことができるような信頼関係で結ばれた学校にしたい、
  • 1人ぼっちでいる人をなくしたい

という気持ちが込められていました。

 生徒会役員の人たちは、スローガンを達成するための新しい総会議案書作成に向け、希望に燃えていました。

 そんな時、しょうがい者を差別する発言がありました。

 今朝(この通信を発行した前日、差別発言がありました。そしてこの日の朝、臨時の集会を持ち、「その言葉は『人と人との関係を切る言葉』であるから使って欲しくない」という指導をしました)同様、その学校でも先生からの話がありました。


 私は、新生徒会役員の人たちに
「この先、ずっと人を差別する発言があったら、こうやって先生が話をしていくのだろうか?」
「その前に、あなたたち生徒自らが、『人を差別するような発言をやめよう』と思えるようにするためには?」
という問題点がまだあるってことを伝えました。


 彼らは考えに考えた末、まもなく予定していた生徒総会の場で、生徒会役員から全校生徒に話すことを決意しました。

 生徒総会当日、生徒会長は生徒会スローガンの説明をした後、こう切り出しました。

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生徒総会当日…イラストACより

「みなさん、今から話すことに対して、真剣に聞いて、真剣に考えて下さい。

 先日、この○○中学校で「しょうがい」を持っている人を差別する発言がありました。

 この言葉は、私たちが掲げたスローガン『信友~本音でつながる絆~』とは正反対の言葉で、この問題をほったらかしにしたまま、このスローガンを掲げても何の意味もないと私たちは考えました。

 だから、議案審議に入る前に、この言葉について話したいと思います。」

 この後、この言葉が実際に生徒の間でどのように使われているか、そしてその差別性を伝えました。

 さらにこの言葉を学校からなくしていくように自分の普段の言葉で訴えました。

 力強く訴える生徒会長の次に、3人の役員がそれぞれ自分の経験から考えたことを伝えました。

 最初の人は、

  • 小学生の時に、友人に対しこの言葉を発してしまったこと、
  • 今この言葉の重さを知り、謝りたいけど、相手は転校してしまい、とても後悔していること

を語りました。


 2人目は軽々しく意味も考えず使っていたけど、生徒会役員の1人としてとても情けなく思っていることを語りました。

 そして最後の1人はこう語りました。
「僕は中学生になって学校の授業でこの言葉について詳しく知って、言葉の重みを知りました。

 この言葉は言った人や言われた人とは関係のない人まで傷つける言葉です。

 この言葉が使われるということは、今の◯中にそれを許す雰囲気があるということです。

 僕も今までにこの言葉を使ったことがあります。でも、使ったことがあるからこそ、みなさんに伝えたいことがあります。

 僕はこの言葉の意味を知って、絶対にこの言葉は使いません。

 僕は正しく知ることで変われたと思います。だから、この言葉を使ったことがある人達もきっと変われます。

 僕たちが憎むべきことは使った人でなく、差別です。みんなで差別をこの◯中からなくしていきましょう。」

 3人の話の後、生徒会長が全生徒にこう呼びかけました。
「この3人は、今、変わったんです。このことをみんなの前で話してくれてうれしいです。

 差別は人間がつくったものだから、私たちの手でなくしていけるんです。

 みなさんは今までの話を聞いて、この言葉に対してどう思いましたか。その思いを発表できる人はどうか発表してください。」

 生徒会役員の人たちも私も、「誰か手を挙げてくれるだろうか」「熱く語った4人に対して、応えてくれる人は、いるだろうか」と固唾(かたず)をのんで待ちました。
※固唾…緊張して息を凝らしている時などに、口の中にたまる固まった唾のこと。事の成り行きを案じ、じっと見つめたりしている時、この固唾を飲み込むことから、そのような様子を表すようになった
 静かに聞き入っていた生徒の1人が手を挙げました。
「僕は小学校の時からずっと人権学習を受けてきたけど、真剣に差別のこととか考えていませんでした。でも、今はみんなで差別をなくしたいと思います。」

 続けて、1人また1人と手が上がりはじめました。もう感動です!生徒会役員の人たちの顔も晴れ晴れとしていました。
 そしてその人たちも自分の感じたことを話してくれました。

 するとこの時、問題になった「しょうがい」のある人を差別する言葉を言ったAさん当人が手をあげました。
「私は今までこの言葉を聞いても、聞き流していました。でも、それは間違っていると気付きました。これからはそんなことは言えない雰囲気をつくっていきたいです。」

 Aさんの発言も、全生徒が静かに聞きました。

 この代の生徒会役員は、次の年、新入生が、やはり「しょうがい」を持っている人に対する差別発言をした時に、学年集会で話して強く訴えました。


 1年生、2年生は、そんな3年生を

「正しいことを堂々と自信を持って話し、そして行動しているかっこいい先輩たち」

と感じました。


 私は、◯中の3年生のあなたたちだったら、同じようにとりくめたに違いないと思っています。
 いや、まだ卒業していないのだから、今でも下級生にその背中で語れます!


 下級生や同級生が人を差別するような言葉を使っている場面に出会ったとき、
「それっておかしくないか。俺はその言葉の意味を知ってから、絶対に使わんって決めたぞ。お前は意味を知ってて、それでも使いよるとか?それとも意味を知らんのか。知らんなら教えてやるぜ」
ってね。

 

 ねっ、素敵な生徒会役員たちでしょ?

 重要なのは、この子たちは、先生に言われたから、言われたとおりのことを集会で語ったのではなく、自ら考え行動したってことです。

 

 あのとき、生徒会役員たちは希望に満ちて、新スローガンをどうみんなに伝えるかを考えていました。

 そんなときに私は、「このまま提案しても、『絵に描いた餅』になる。なぜなら、人と人との関係を切る言葉(差別発言)が何度もあってるし、それを聞いた周りの人も知らぬふりをしているから」と冷や水を浴びせるような話をしました。

 

 でも彼らは、私の投げたボールを見事に打ち返しました(^^)

 

 私はきっかけをつくりましたが、どんなことを生徒総会で話すかについては、ほとんど生徒会役員たちで考えました。

 さらに、子どもたちは、自分たちの考えが独りよがりではないか、たくさんの先生からアドバイスももらっていました。

 そして生徒総会。

 全校生徒がどんな反応をするのか、役員たちも私も経験ありません。まさにシナリオなんてない生徒総会のやりとりでした。だからこそ生徒会役員も、私も、そして他の先生方も固唾を呑みました。

 そして、とてもとても素敵な時間を、学校にいる全員で共有できました。