もへちゃん先生の学級通信の資料置き場

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ハンセン病について、知る→感じる→行動する

 テレビのニュースで、「ハンセン病家族保障法が成立 最大180万円を保障-国会と政府『深くおわび』」と報道されました。

 「ハンセン病」…ご存じでしょうか?かつて「らい病」と呼ばれ、治療をせずに放置すると体の変形を引き起こすことから、恐れられた感染症です。

 アニメ「もののけ姫」では、タタラ場(日本の伝統的製鉄場)で働く人たちが描かれます。さらにタタラ場のさらに奥、隔離されているような場所に包帯でグルグル巻きにされた人々が寝かされていました。

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「行くあてのない私たちをエボシ様だけが受け入れてくれた。」

「わしらを人として扱ってくださった、たった1人の人だ。わしらの病を恐れず、わしの腐った肉を洗い、布を巻いてくれた」

 もののけ姫の中ではここで働く人々について「業病」(悪い行いの報いとしてかかるとされた、治りにくく、つらい病気)と表現されています。

 この差別実態や病気に対する解釈が、ハンセン病に対してのそれらと似ているということで、宮崎駿さんがハンセン病患者を描いたとする解釈もあります。

 

 ハンセン病は1943年、特効薬が開発され完治する病気になりました。しかも、ハンセン病の感染力は弱く、ほとんどの人は自然の免疫があるため「最も感染力の弱い感染病」であることも医学の発展とともにわかってきました。

 それなのに日本は、ハンセン病患者に対する方針を変えようとしませんでした。

 方針を変えたのは1996年になってやっとです。

 この年にハンセン病患者を隔離するという法律を廃止しましたが、廃止するまでの長期にわたる隔離政策が、ハンセン病に対する偏見や差別をよりいっそう助長したと言われています。

 話を元に戻しましょう。

 ハンセン病家族保障法の原告団団長の林力さんは、大学時代「同和」問題概論という講義でお話を聞いたことがあったり、先生になってから、いろんな場所でお会いしたことがありました。

 林さんがライフワークとしてとりくまれていた運動が実を結んだんだなぁと嬉しく思いました。

 そこで今回は、ハンセン病についての人権学習を実施した日の学年だよりを紹介します。

日本の人権の新しい時代

 今日、君たちはハンセン病の元患者に対する差別について学んだ。
 簡単におさらいしよう。
 知識が無かった時代の差別→治療法の確立→法による差別→国の謝罪(2001年)
 2001年以降、差別は無くなるはずだった。
 けれど2003年「宿泊拒否差別事件」が起こった。
 テレビのニュースでこの差別事件を知った時、僕はびっくりした。だから「拒否したホテル側がまちがってる!」と多くの人が言うと思った。
 けれど一部の人たちは、そうじゃなかった。差別の手紙や電話を元患者の人たちに送りつけた。
 元患者の人たちにとっては、宿泊拒否より、その後の手紙やFAX、電話などの方がつらかったそうだ。

 学年だよりミニ33号の最後に「この、くだらない、いびつな差別だらけの社会とどうやって闘えばいい?」と問いかけたが、2003年の日本はまさにそのとおりだった。


 時は移って2018年2月22日、すなわち昨日。◯◯市「同和」教育の研修会で聞いた話

 スポーツは徹底して「無差別」「平等」なんです。
 「信じてる宗教が違うから、10メートル後ろからスタートさせる」とか「肌の色が黄色だから、タイムを初めから+3秒」なんてこと、無いでしょう。
 今まさに平昌オリンピックがあっています。オリンピックは「スポーツの祭典」と言われますが、「人権の祭典」でもあるんです。
 オリンピックの根本原則には
すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツする機会を与えられなければならない
とあります。
 2020年に東京オリンピックパラリンピックを開催するにあたって、日本政府は、このくだらない、いびつな差別だらけの社会を変えなければと
障がい者差別解消法
ヘイトスピーチ解消法
部落差別解消推進法
を2016年に国会で成立させ、すぐに施行しました。

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2020年東京オリンピックパラリンピック

 日本の人権の新たな時代が始まるのです。

 差別を残してしまった大人の代表として、今まで人権学習の最後は謝ることが多かった僕だけれど、今回は少しだけ自慢したい(笑)
 僕たち大人と一緒に差別のない世の中を作っていこう!

 

 この通信を出した日に行った「ハンセン病」についての人権学習では、まず最初に下のグラフを見せながら「ある病気にかかった人の数です。このグラフからどんなことがわかりますか」と質問しました。

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患者数の推移のグラフ

 子どもたちは「ハンセン病」と書かれていてもほとんどの子は知りません。偏見が入り込む隙がないわけです。なのでグラフから読み取れることとして「ほとんど患者がいない」とか「なくなりそうな病気です」と発表しました。

 ここで授業めあてを提示しました。

めあて

ハンセン病問題について、知って、感じて、行動しよう

 

 続いてハンセン病についてのDVDを見せました。「生きて、咲く~瀬戸の少女とハンセン病~」というドキュメンタリー番組を15分に編集した動画です。

www.ntv.co.jp

 わかりやすいから選んだのですが、それでも子どもたちにとっては知らない言葉がどんどん出てきます。以下のような言葉です。そこで解説を入れながら視聴しました。

  • 生きて、腐る
  • ハンセン病、らい病
  • 強制隔離、隔離政策
  • ハンセン病療養所
  • らい予防法
  • 国は2001年、謝罪
  • 私たちの未来まで奪われました
  • 100人近い入所者がまりかさんをお祝いしました
  • うつらない、遺伝もしない、今かかることもないし、治せる
  • 全盲
  • 無らい県運動
  • 法律で差別され、身の周りの人からも、親からも差別された
  • 今も多くの人は差別をおそれ、人目に触れるのを避けています
  • 優生保護法、断種、中絶、堕ろされる
  • 本名を使わない
  • 子どもがいたら
  • 国がそれを決めたから、そういう法律があったのが1番の大きな理由

 このDVDと解説で、

  1. ハンセン病は、感染力が弱く発病しにくいことや、治療方法が確立し、治る病気であること
  2. ハンセン病は、長い間、偏見と差別の対象とされたこと
  3. 「絶対隔離政策」というまちがった国の施策のために、差別が助長されてきたこと

を伝えたかったわけです。

 

 さらにこの後、2003年に起こった、元ハンセン病患者に対する黒川温泉宿泊拒否事件について新聞記事を使って考えさせました。

 もちろん子どもたちの意見は「ひど~い」という意見がほとんど。

 でもこの事件の後、世論はどうなったかというと、「ひどい」と考える人ばかりでなく、宿泊拒否したホテルの側に立って擁護する意見も少なからずあったのです。

 

 そして元ハンセン病患者たちに対して「弱い立場の人(元患者たち)の主張を排除しようとしている」手紙や「会社の利益を擁護する」手紙、「ホテルの判断をかばっている」手紙が届いた事実を知らせました。

 授業では、そんな差別の手紙を提示して、

  • まちがっているところはどこか
  • 差別しているところはどこか
  • 反論してみよう

を考えさせました。

 

 その後、元患者たちに届いた多くの励ましの手紙を紹介し、差別の手紙に対して子どもたちが考えたことと同様な意見

  • 会社の差別性を指摘し、差別や偏見をなくそうとしている
  • 正しい知識を持ち、事件について考えている。

 だったことを確認しあいました。

 

 授業の最後は、「あなただったら元患者さんたちにどんな手紙を書きますか。実際に書いてみましょう」で締めくくりました。

 この授業のどの部分が「知る」で、どの部分が「感じる」で、どの部分が「行動する」か、わかりますか?

 人権問題について学ばせる場合、「知る、感じる」で終わるのではなく、「行動する」まで子どもたちを高めたいです。そして授業の最後に「ともにガンバロー」と締めくくりたいです😊